海のオトコ  Category: 記憶をたどって…

Posted at 06/07/23 Comment(0)» Trackback(0)»

「ああ、そろそろ、海に行きたいなぁ…。」
4月になったばかりだというのに、黒い痩せっぽちはそう言った。

(はぁ?…海?)
…あ、そうだった。
このオトコ、夏は、ウインドサーフィンするって言ってたっけ。

テニス、スキーまでは、許せる。
実際に初めてのスキーには、しっかりハマってしまった。
だけど、海はダメ、絶対にイヤ!…冗談じゃない!!

海なんて、紫外線が強くって暑いし、泳ぐのも好きでない。
だいたい、水着なんて、もう、絶対に着たくない。
だから、海なんて、絶対にイヤ。
それなのに、このオトコは、4月の初めから、海の話をしているのだ。

「ワタシ、海は行かないからね。」
そう言うと、黒い痩せっぽちは、ちょっと、驚いた顔をした。
「ええ〜、そうなの?…夏はずっと、海だよ〜。」
「だから、ワタシは行かない。別に、一緒に居なくても良いし。」
「そうか…。でも、海はいいぞ〜。」

ワタシ、イヤだって言ってるんだよ。
こっちの言う事を、聞いてるんだか聞いてないのか…。
全く動じないこのオトコ、いったい、どうなってるのだろう。


この頃になると、お互いの生活に、想像と理解を超える事も出てきて、
時々、ケンカにもなった。
ケンカといっても、まあ、「もう帰るわ。」
「ああ、そう…じゃ、どうぞ。」てな具合なのだが。
そして、その晩か翌日…あるいは週末に、全く何事もなかったように、
明るく電話してくるのが、いつものパターンだった。
こうなると、ワタシだけが引きずっているっていうのも、
プライドが傷つくので、結局、こっちも、普通に対応してしまう。

(何やってんだ、ワタシ。)


黒い痩せっぽちと逢うようになって、
急に、他の男友達が、ギラギラしているように見えてきた。
コレまでのように、友達としては見られていないような…。
みんな、彼女も居たりするのだけど、妙に親切だったり優しかったり、
下心丸見えな気がして、だんだん“食事会”や“飲み会”にも
参加しなくなっていた、ワタシである。

『黒い痩せっぽちが、ダイスキ!』…だった訳ではない。
そう、ワタシにはまだ、本当の恋愛は、とっても無理だった。
かといって、大嫌いかといえば、そうでもない。
じゃあ、遊びなのか…と言われると、それもまた違う。

(ワタシたちって…。)

自分の気持ちもよく判らなかったけれど、彼の気持ちも判らなかった。

(コレで、私たちの付き合いも、もう、終わりかな。)

この時は、まさか、このワタシが、海へ出かけることになろうとは
これっぽっちも思ってはいなかった。

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