中途半端な関係  Category: 記憶をたどって…

Posted at 06/06/25 Comment(6)» Trackback(1)»

「ええーーー!マムさん、もしかして、付き合ってるの?」
朝の女子更衣室に、甲高い声が響く。
「ちょ、ちょっと、アナタたち、声が大きいわよ。」
お局さまに聞かれたら、何を言われるか…。
「だから…つきあってるというか…。断る理由もきっかけも無くて…。
それに、踏み台でいいなんていうモノだから。」

「ええ〜、じゃぁ、なに?、キープなんですか?」
「いやぁ…そういうわけじゃないんだけど。」
「じゃ、彼氏なの?」
「マムさん、素敵な男友達、たくさんいるのに…。」
「あの人のコト、好きなんですか?」
「バカ…。くだらない事言わないで、早く着替えなさい。」
若い子の質問は、本当にストレートである。
この子たちはまだ、黒い痩せっぽちを見たこともなかったのだが。


黒い痩せっぽちとワタシが出会ってから、既に半年が経っていた。
スキーだけでなく、いつの間にか、多くの時間を一緒に過していた。
彼は、都合のつく限り、ワタシに逢いにきた。

このオトコのどこが良かった…という訳ではない。
外見の事を言えば、ワタシの好きなタイプではなかった。
“素敵な男友達”たちとは、時々、会社の子も一緒に食事に行ったので
彼女達が言う事も、わかる気がする。

ただ、上手く言えないが、彼は、他のどの男友達とも違っていた。
いや、だからこそ、男友達とは言えない存在になっていた。
だが、ワタシの気持ちは、ものすごく中途半端なところにあった。
信頼や安心感はあったが、果たしてコレは、恋愛感情なのだろうか…。

ワタシはそれまで、年上の人としか付き合ったことがなかった。
相手は、だいたい、倍率の高いタイプのオトコだった。
そして、ワタシはなぜか、かなり尽くすタイプであった。
ワタシの恋愛感情は、尊敬の気持ちから始まることが多かった。
だから、同級生の場合は、どんなに相手が背伸びしても、
男友達以上の関係にはなれなかった。


「別に、彼と将来を考えてる訳じゃないのよ。」
「じゃ、遊びなの?」
「でも、マムさんも、まだ、結婚して子供を産みた…」
「っチョ…チョトぉ、ミイ!」
「あ…ゴメンナサイ。」
「ばかねぇ。そんなこと気にしなくて言いのよ。
ワタシ、もう大丈夫だから…さ、仕事、仕事!」



正直、これから先、結婚する気は全くなかった。
そして、この時のワタシの体は、子供が産める状態ではなかった。
それに、黒い痩せっぽちと私は、本当に共通点が少なかった。
価値観も違っているように思えて、仕方がなかった。
育ってきた環境、自分の立場、得意・不得意な事、性格や行動…
何もかもが、違っているようだった。
共通点と言えば、歳と血液型…くらいかな?
当時のワタシには、本当の彼が見えていなかった。
…というか、見ようともしていなかった。

だが、その反面、自然体のこのオトコといると、なんだか、
とても癒されていた。
コレまでの、恋愛感情だけで成り立つ関係では感じたことのない、
不思議な気持ちだった。



当時のワタシは、日常の行動とは全く別の…かなり深いところに、
心情を落としていた。
その時のワタシの心身は、既に…専門医に診てもらうレベルを、
はるかに超えていたと思う。

だが、ワタシの脳の隅っこで、何となく感じていた。
(コレは、精神科では治せない…。)

幸い、ワタシには、本当に名医と呼ぶに相応しい主治医がいた。
その当時で既に、十数年診てもらっていた、産婦人科医、コウ先生だ。
「マムさん、クリニックの方へおいで。
とりあえず、今の状態だったら、ボクが診ましょう。」

この時、何かを悟った主治医の判断は、正しかったと思う。
そして、この主治医こそ、後に、ボロボロの心と身体のワタシに、
3兄弟を授けてくれた、本物の名医なのだ。

今思えば、この時期のワタシは、コウ先生の医学的サポートと、
黒い痩せっぽちの自然体の癒しのおかげで、かろうじて
壊れずに居られたのだと思う。

あの頃の私は、どこに居ても先回りして“もう大丈夫モード”を演じ、
本当に疲れきっていた。
かといって、同情や配をされたり…また、別の興味の対象になるのは、
もっと嫌だったので、そうするしかなかった。



黒い痩せっぽちの黒いワゴン…。
コレがワタシの、たったひとつの癒しの場所だった。

このオトコは、自分からは、何も訊かないし、何も言わない。
ただ、日常の何気ない会話を始めるだけ。
そのうち、ワタシの口から、あらゆる毒が吐き出される。
それを、黙って聞いて、時々、同調の相槌をうつ。
今だからこそ判るのだが、彼は、“カウンセリングの基本”を
ごく自然におさえていた。

そして、毒を吐ききったワタシは、よく、車の中で眠り込んだ。
ワタシを悩ます症状の中には、当然“不眠”もあったので、
この車中睡眠には、大いに助けられていたワタシである。

黒い痩せっぽちは、一緒に居る間、ワタシの身体が休まるように、
あらゆる事に気を配る、そんなオトコだった。
それでいて、マメオ君にありがちな“アピール”を感じさせない、
本当に自然な行動だった。
それが…とても、心地よかった。

…だがしかし、当時のワタシは、やはり恋愛感情先行では、
なかったように思う。



「…で結局、どうなんですか?」
ワタシの一番弟子の、ハマちゃんが言う。
「うん、今のところ、このままで。」
「ま、ズレては無いですよね。マムさんの基準から。」
「基準?」
「ほら…いつも言ってる…あれ。」
「ああ、アレね。」
彼女はワタシが、若い頃ずっと使っていた言葉のことを言う。


「バカとデブとハゲは嫌い。」

若い頃、怖いもの知らずのワタシが、理想の男性を聞かれて、
よくふざけて言っていた言葉だ。

バカとは…単に頭(成績)の良い悪いでなく、空気の読めない人
デブとは…本当の体型ではなく、行動と考えの横着な人
ハゲとは欲の深い人、のたとえだった。

いや、この言葉に関しては、本当に、若気の至り…ということで…。
ゴメンナサイ。



(そっか…。アイツ、ワタシの基準、クリアしてんじゃん。)

その頃のワタシが、彼に溺れることがなかったのは、
まだ、オトコの価値に、くだらないものを求めていたのだろうか。
それとも、ワタシ心が、普通の状態ではなかったからだろうか。
いや、その頃のワタシは、生きているだけで精一杯だった。
そして、いつ命を落としても、かまわない…そう思っていた。

(ワタシは、誰とも一緒にはならない。
最後まで独りで、彼女の面影と共に、生きていく。)


もうすぐ長い冬が終わり、やがて春が訪れようとしていた。
ワタシは、そんな季節の変化にさえ、少しも気づいていなかった。



この時、黒い痩せっぽちは、どう思っていたのか。
それは、ワタシにはわからない。
もしかして、ココで、聞ける?…かも?!



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いきなり振るなよ

from ダディのページ at 06/06/25

爆走!!強妻頑母がゆくへのトラックバック。トラックバック先はこの記事。それほどバカだとも思ってなく。デブとは正反対のやせっぽち。とりあえずハゲてもいなかった私です。(最近ちょっと薄くなりかけですけどね)そういう意味じゃないって? 何でしょうね?>「育っ?

"中途半端な関係"へのコメント

CommentData » Posted by MYU at 06/06/26

TITLE:
その、『好きになる人の基準』って分かりますよ。
私も『賢い人』が好きです。
「物覚えのいいバカ」じゃなく「応用力・学習能力」のある人。
それに、今の旦那さんが一番『器の大きな人』だったのではないですか?
大きいものは近くにいると気付かないことがありますから・・・。
マムさんの文章を読んでてそんな気がしました。
(^^ゞ

CommentData » Posted by とみはち at 06/06/26

TITLE: 多分
うちに彼氏も賢い方だと思います・・・(汗
けど勉強で頭がいいのもいいと思うけど
人生的に賢い人って尊敬しますね。
やっぱり夫になる人は賢い人がいいですねぇ。
身をもって知りましたし・・・
_| ̄|○ガクッ
(*´∇`*)

CommentData » Posted by ノア at 06/06/27

TITLE:
うちのダンナはあんまり賢くない。わたしが全部舵取りしています。
でも、勘がいいところがあるのよね。
こっちが一生懸命考えた末にたどりつくようなことを一発で当ててしまうようなところがあります。
無邪気だし・・この年で。
まあ、結果オーライということで、よしとしよう。

しかし、バカ、デブ、ハゲの裏にこんな意味が隠されていたとは・・・。
賢くなれたわ。
ありがとう、マムさん。

CommentData » Posted by judy at 06/06/27

TITLE:
なんか、読んでるうちに黒い痩せっぽっちを想像しちゃいましたwでも人として尊敬できる人、いいですよね。空気の読める人も。あとどんな逆境にあっても転換できる人。柔軟性のある人。
そんな、大人になってほしいp( ´∇` )q息子たちには。(願)

CommentData » Posted by bunga3 at 06/06/27

TITLE: 偉い!
マムさん、偉い!何が?ってしっかりとした
自分の考えをもっていて、軸がぶれてないもの。
しかも家計のやりくりもちゃんとやっていて
見習わなくっちゃ!
我が家も年金暮らしなのに、出費がかさむ
ばかりで、私はちっとも節約精神がないのです。マムさんのブログを読んで反省しました。

CommentData » Posted by アンティーク・マム at 06/06/29

TITLE:
☆MYUさん
器は大きかったのかもしれませんね。
どうなんでしょうね。
ワタシタチの関係は、不思議な関係でした。
つい、最近まで…ね。

☆とみはちさん
ワタシの場合、夫になる人が、頭が良い方が良い…というよりは、
自分が向上できる何かを、相手に求めているのだと思います。
相手に見合った自分を育てて行くことが、好きなんだと思います。

☆ノアさん
人はみんな違う個性を持ってるんだから、自分達の、“何か”があるはずですよね。
ノアさんとご主人も、きっと、「この人でなければ…」という何かがあったのでしょう。
結果オーライです。
あ、ダディのページにもコメント、ありがとう。

☆judyさん
あ、息子達にそうなって欲しい…というのは、ワタシもあります。
子供たちが、「バカ・デブ・ハゲ…」と言われてたら、たまりません!(笑)

☆bunga3さん
いやぁ…偉いコトなんて、何もありませんよ〜。
若いときの私は、怖いもの知らずで、今から思うと、チョット嫌なやつだったかも。
ま、当時も、爆走でしたけど。(笑)
節約…必要に迫られたとはいえ、きつかったです。ハイ。

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