初めての生活費  Category: 記憶をたどって…

Posted at 06/04/02 Comment(6)» Trackback(0)»

93,396円

コレは、私達が結婚する2日前に振り込まれた、彼の給料。
もちろん手取りだから、財形貯蓄だとか、カード払いの給油代とか、
社宅料、弁当代、各種保険料…などを差し引いた額だ。

実は、この頃、ダディの会社はとても厳しかった。
だから、残業手当は殆どカット…いわゆる、タダ残業である。
そして、彼は結婚の前の年に受けた昇級試験に合格し、春からの給与は、
コレよりもう少し、上がる事にはなっていた。
なっていたのだが、それにしても…。
コレでは、ワタシの不妊治療なんて、していられない。
結局、それからしばらく…不思議クンを授かるまで、共働きをした。

結婚して2年目に、ダディは、また、昇級試験を受けた。
彼の経歴からいくと、異例とも言われるスピードだった。

この昇級試験、誰もが簡単に受かる…というものではない。
まず、受験するために、上司に推薦されなければならない。
それから、自分でテーマを決め、論文を書く。
そして、二次審査は、役員面接がある。
同じ社宅の中でも、何人も落ちている。

何が大変かって…この試験を受ける事になると、何ヶ月もの間、
資料を集め、論文を書かなくてはならない。
その間も、仕事はあるのだから、当然、仕事の時間以外で、
試験の用意をする。
…つまり、昇級試験の年は、まさに受験生を抱えた状態になるのだ。

ワタシは、まだ6ヵ月の不思議クンと、彼の邪魔をしないように、
気をつかって過ごした。
週末は、外で遊んだり、散歩をしたりした。
寒い季節に、2時間も散歩した事もある。
私達に出来る事は、そのくらい…つまり、彼の邪魔をしないこと。
ウチの中の空気が、ピリピリしていた。

そして、その試験も、彼は見事に合格した。
この頃から、少しずつ残業手当もつくようになり、私達は、それまで
頑張ってしてきた、少しの貯蓄を元に、マイホームを購入した。
その後また、時間外手当も、全額、きちんとつくようになり、
フレックス制度が取り入れられ、早出の場合も手当てがでた。

そして、彼は必死で働いた。
家のローンを払いながら、3人の子供を育てるために。

その頃から、社内の空気が、ほんの少しずつ変わってきた。
もちろん、この国に長く根付いた“学歴社会”が、そう急に変わる訳は
なかったが…社内で“能力重視”の兆しが出て来たのだ。
そして、昇級試験の内容や、勤務評定の仕方も変わった。

「オレは、みんなとは違う。
自分を守るためには、人よりずっと先を見てなくちゃいけない。
それが、自分の立場を守るためだと、いつも考えている。」

いつもそう言って、真剣に仕事に取り組んできた彼は、昨年、また
昇級試験を受け、見事に一発合格を果たす。
大卒の同期と同等か、それ以上の評価である。
それはもう、彼にとっては、“信頼を得た”証だった。


最近になって、よく、結婚前に両親とモメたことを思い出す。
彼の収入のことで、両親が結婚をシブり始めたのだ。

ウチの父は、自身はとても問題アリのオトコだが、自分のことは棚に上げて、
人の批判をする事が、得意である。
そして我が家は、結構“学歴”とか“家柄”とかを、気にするウチである。

「お前のコレまでの経済感覚とは、全く違うんだぞ。
今までのように、好きなモノを食べて、好きなモノを買う…
そんなことをしていては、生活できないぞ。
10年もそんな生活をしてきたお前に、そんな我慢が出来るものか。」

そして、母も心配した。
「マムちゃん、ダディさんの給料じゃ、あなたの金銭感覚じゃ無理かもね。
お金の苦労は、辛いわよ。」

苦労してきた母の言葉は、重かった。

こうして、連日話し合ったある日、ダディが家にやってくる。

「ボクの給料は。確かに少ないですけど、マムさんを不幸にはしませんから。
○○(←会社名)も、今が一番大変な時ですが、ボクの仕事は、
残業手当がつくようになれば、少し楽になります。
最初は大変かも知れませんけど、ずっとこんな訳ではありません。
マムさんを、絶対に幸せにしますから。」

その時の彼は、毅然としていて、一歩も引かなかった。

それを聞いた母が、キッパリと言った。
「ダディくん、今の約束を信じるよ。忘れないでね。」
母は涙ぐんでいた。

後から知ったのだが、ダディはこの日、念書を書く用意をして来ていた。

それから10年。
ワタシは、このあたりでは、人気のある団地の一戸建てに住み、
3人の子供に恵まれ、ダディと共に毎日を送っている。
依然として生活は厳しいが、それでもあの“93,396円”から思えば…。
ダディの給与は、信じられないくらいに増えた。

約束どおり、彼はいつも、ワタシを守ってきた。
私達には、なくてはならない、大切な存在である。
生活の中で、イロイロな事が起こり、喧嘩ばかりしていた10年。
ともすれば、感謝する事を、忘れがちだった。
ゴメンねダディ…そして、本当にありがとう。

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"初めての生活費"へのコメント

CommentData » Posted by SNAFKINわたこ at 06/04/03

TITLE: なんとかなる
おはようございます。
本当にいつも共感できる記事をありがとうございます。

私達夫婦が結婚した頃はまだバブル後期だったので、手取り13万ぐらいはあったかな・・・。  でも夫はメーカー勤務、共働きの私は大手金融機関。  お給料の差は歴然としていましたね。  

私の場合なんの計画もなくすぐに妊娠しましたが、出産予定日の1週間前まで働きました。  退職し、出産し、家族3人の生活になった頃、バブルがはじけて手取り10万未満の生活が始まりました。  本給・家族手当・残業代全てカットというきついものでしたが、幸いなことに社宅に住ませていただいておりましたし、その社宅で辛さを分かち合えるという機会にも恵まれていましたので、何とか切り抜けここまでやってこれました。

独身時代の華やかな生活と比べると、1桁は生活感覚が厳しくなったと思います。  遊びたおし、飲み・食べたおしたせいか、不思議とその厳しい生活が嫌だと思ったことはありません。

節約し、頑張って6年前にマイホームを購入しました。  もちろんマムさんと一緒で、双方の親からの援助は一切なし。  自分達で貯めた頭金と自分達が払っていけるだけローン。
これが私達家族の身の丈の生活と笑える余裕も出てきました。  これからもローン返済に節約生活、頑張るぞ!

CommentData » Posted by すきやき at 06/04/03

TITLE:
いつも共感が出来る記事です。私も結婚当初は本当に苦しかった。
でもそこに、『愛』があったからこそ、乗り越えられてたのかも、、、
今では、きっと無理。
愛していないと言うことではなく、年とともに根性がなくなってきてるので。
今はローンも無く、ぼんやりと自分の時間を有効に使っていますが、あの頃は毎日が戦争みたいだったのを覚えています。
何しろ、自分の物なんて、何年かに一度しか買えなかったもの。
マムさん、そのうち楽になるよ。
学歴社会って、、、今はだいぶ無くなって来てるんではないですか?
ウチの場合はその点では、苦労しなかったけど。

CommentData » Posted by とみはち at 06/04/03

TITLE: いつ見ても
尊敬するご夫婦ですよね。
私もそういう風になれるといいなぁ〜
と今からマムさんのblogでお勉強♪
と言っても・・・私たちの場合は
結婚する前から共働きがほぼ決まり。
って言っても子供が学校に行ってる時間帯だけっていう決まりも付いてますがね。
長女は今から大学に行きたいと行ってるし。
彼の家は兄弟2人とも大学出てるし・・・。
と言うわけで出来るだけやりたい事は
やらせたいので頑張らないと
p(´∇`)q ファイトォ~♪

CommentData » Posted by アンティーク・マム at 06/04/04

TITLE: コメント、ありがとうございます!
☆SNAFKINわたこ さん
アハハ…ホントに、わたこさんとは共通点が多いようですねぇ。
ワタシも、辛いってカンジじゃないですよ。
「この、豚コマで、何作ろう?」とか、「コレ、何かに使えないかしら?」ての、好きですから。
買ったり、着たり、食べたり…そういうことでしか欲求を満たされない人には、
耐えられないと思うけど、家族と頑張ってるのっていいですよ。
お互い、頑張りましょう!

☆すきやきさん
おっしゃってる事、どれも、よ〜くわかります。
ワタシも、子供がこの年だから、頑張りがきくんだと思います。
ダディと2人だったら、文句言い放題かも?!
学歴社会…今も、変なところで、しっかり影響してるようデス。
能力があっても、美味しいところは、肩書きに持っていかれる…とかね。
ダディの実家は、こういうことに無頓着だったようなんですよね。

☆とみはちさん
どういう形であれ、自分自身をしっかり持って、相手に感謝できれば、大丈夫です。
っていうか、一緒に頑張って行けるようなパートナーを見つける事が、大切だと思います。

CommentData » Posted by ノンちっち at 06/04/04

TITLE:
素敵なお話ですね・・・以前の夫婦についての考え方の記事にも感動を覚えましたが、今回も心に沁みました・・・。
私も10年後にそんな風に振り返れるように、努力して今を生きていきたいなあ・・・と思いました^^

CommentData » Posted by アンティーク・マム at 06/04/05

TITLE: ご訪問&コメント、ありがとうございます。
☆ノンちっちさん
10年って、ホントに長〜い月日です。
だから、涙あり笑あり、そんな沢山の想い出が出来ますよ。
しっかり笑って、しっかり泣いて、人生を楽しんでくださいね。

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